お知らせトピックス

保護司のためのブックガイド(3)
お知らせ
2023.03.11
『ある男』平野啓一郎著 文春文庫
列島が熱狂した「侍ジャパン」第2戦(1次リーグ・対韓国)のテレビ中継と重なったため、こちらの番組は見逃した人が多いだろう。今年の日本アカデミー賞の授賞式が放映され、最優秀作品賞に『ある男』が選ばれた。監督賞(石川慶監督)、主演男優賞(妻夫木聡さん)、助演男優賞(窪田正孝さん)、助演女優賞(安藤サクラさん)なども含めて8冠に輝いたのだから、侍ジャパンと同様の圧勝である。
映画の原作となったのは、芥川賞作家平野啓一郎さんによる同名のヒューマンミステリー小説。再婚相手である夫「大祐」が事故で急死した直後、実は夫は「大祐」ではない全くの別人だったことが分かる、というところから物語は始まる。これ以上はどう書いてもネタバレになりそうだが、在日の人たちや犯罪加害者の家族に対する偏見や嫌がらせをはじめ、現代社会が抱えるさまざまな問題に果敢に切り込んでいこうとする著者の意欲作の一つと言っていいだろう。
罪と罰をめぐる平野さんの問題意識を示す著作をもう1冊、紹介したい。自身の講演録を加筆修正した論考『死刑について』(岩波書店)。死刑制度の存廃については賛否がくっきりと分かれる問題でもあり、ここでは内容に深入りしない。写真にある本の腰帯を読めばすぐに察していただけると思う。