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連載「理不尽―ある解任騒動の真相」③『不誠実』
取り組み
2025.05.17
さて、いよいよ本題に入る。2023年(令和5年)3月16日の広島県保護司会連合会(県保連)理事会に提出された動議が、いかに理不尽な内容であったか-。
この稿の末尾に、八崎則男会長と吉川水貴選任理事の解任を求めた動議1と動議3のうち、今回の連載③に関連する部分だけを転載した。全文転載も検討したが、用字用語も含めてあまりにも杜撰(ずさん)な文章であり、事実無根のくだりが独り歩きしても困るので、今後も関連部分だけをその都度掲載していくことをご理解いただきたい。
まず注目は議題1の(2)の3)だ。冒頭に「広島千茶荘は、理事で広報委員長の職にある吉川理事が役員をしている会社である」とある。
確かに吉川氏は(株)広島千茶荘(廿日市市)の専務だが、県保連では決して理事で「広報」委員長ではなく、正しくは選任理事で機関紙『更生保護ひろしま』の「編集」委員長である。相手の肩書をいきなり間違えるあたり、あきれて言葉も出ない。
それはさておくとしても、問題はその直後のくだりである。「よって千茶荘との取引は法で禁止されている自己取引と見なされるが(八崎)会長はこれを認めている」とある。
自己取引とは企業・法人の役員がその企業・法人との間で行う取引で、利益相反につながりかねないとして会社法や一般社団・財団法人法で「禁止」(厳密には「禁止」ではなく「制限」)されている。
広島千茶荘が県保連から『更生保護ひろしま』と『更生保護ひろしま70周年特別記念号』の作成(取材・編集・印刷・発送)、さらに県保連のホームページ刷新を請け負っていたのは事実であって、「自己取引」と言われればその通りだ。
だとしても、動議の「法で禁止されている」とはどういうことだろう。任意団体である県保連が、一体いつから会社組織や社団・財団法人になり、会社法や一般社団・財団法人法の対象になったというのか。
関連して議題3も「この千茶荘と県保連の取引は自己取引とみなされるものであり、利益が相反する違法取引である」と主張する。ここでも具体的な法律名には触れないまま「違法」と決めつけたばかりか、根拠を示さないまま「利益が相反する」と言ってはばからない。いかにも乱暴が過ぎないか。
例えば毎月の機関紙作成で吉川氏は千茶荘社員に命じ、会社のパソコンを使って全ページの編集作業をさせたり、刷り上がった機関紙の袋詰めや送り状作成などの発送業務を手伝わせたりした。そうして吉川氏は、それまで年間190万円かかっていた機関紙作成予算を、編集委員長就任後には120万円程度にまで圧縮している。
いわば自社の儲けより県保連の利益を優先し、一般的な「利益相反」のまさに真逆になっていたのであって、県保連側が「違法」などと言いがかりを付けるのは、そもそも筋違いで失礼千万な話なのである。
吉川氏が動議に対し、その場で「『儲けにならんことを何でやるのか』と弊社で私は苦しい立場にある」と発言したことを、理事の皆さんも聞いていたはずだ。
金額面だけではない。吉川氏が編集委員長だった当時の『更生保護ひろしま』バックナンバーはこのホームページの「会報誌PDF」コーナーに載せてある。そのページデザインやレイアウトをじっくりご覧いただければ、編集技術向上へ不断の努力を惜しまなかった千茶荘社員の献身ぶりは理解できるだろう。むしろ県保連側は感謝すべきではないか。
県保連会長だった八崎氏が吉川氏を編集委員長に抜擢し、機関紙やホームページ刷新を任せたのも、吉川氏の持つ幅広い人脈と情報発信の技量を信頼し、利益相反どころか「ウィンウィン」を期待したからにほかならず、実際にそうなっていたわけである。
この動議は提案したのも賛同したのも保護司だ。法を犯した人間の立ち直りを支える民間ボランティアであり、同時に法務大臣から任命された非常勤の国家公務員でもある。だからといって法に詳しいとは限らないにしても、違法でないものを「違法」とし、それを鵜呑みにしたとすれば、それこそ厚顔無知にもほどがある。
というか、この動議の文面からは発案者の悪意がストレートに伝わってくる。明確な根拠を示さないまま「利益相反」と決めつけ、そうして八崎氏や吉川氏があたかも私腹を肥やして県保連に損害を与えたという誤ったイメージを植え付けようとしているとしか思えないのだ。
ごまかしに満ちた文面で同僚(=県保連の理事ら)をも欺き、そうして動議への賛同を募ったのは、二重の意味で「不誠実」と言うほかない。
八崎氏や吉川氏は解任された後も粘り強く反論を続けた。県保連側からは何度か回答があったが、いずれも納得できる内容にはほど遠かった。その詳しいやり取りは次回で。<つづく>
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◎解任動議(一部抜粋)
議題1.八崎則男広島県保護司会連合会会長の解任の件
提案理由
(2)「ホームページ改善案」の業務執行の違法性
3)広島千茶荘は、理事で広報委員長の職にある吉川理事が役員をしている会社 である。よって千茶荘との取引は法で禁止されている自己取引と見なされるが会長はこれを認めている。
議題3.吉川水貴選任理事の解任の件
提案理由
吉川理事は「更生保護ひろしま」の編集委員であるところ、同理事は、自己が役員をしている広島千茶荘に対して、「更生保護ひろしま」の印刷業務を発注し、同社は毎月、県保連から支払を受けている。
又、「更生保護ひろしま」70周年記念特別号の作成を広島千茶荘が受注し、その作成費として140万円余の支払を受けた。
さらに「ホームページ改善」製作業務を受注し、多額の製作費が支払われている。
この千茶荘と県保連の取引は自己取引とみなされるものであり、利益が相反する違法取引である。よって解任を正当とする。
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◎参考
会社法第356条(競業及び利益相反取引の制限)
取締役は、次に掲げる場合には、株主総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。
一 取締役が自己又は第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をしようとするとき。
二 取締役が自己又は第三者のために株式会社と取引をしようとするとき。
三 株式会社が取締役の債務を保証することその他取締役以外の者との間において株式会社と当該取締役との利益が相反する取引をしようとするとき。
2 民法第108条の規定は、前項の承認を受けた同項第2号又は第3号の取引については、適用しない。
【編注】「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」第84条にも同様の規定があります。