連載「理不尽-ある解任騒動の真相」⑤『鵜と鵜匠(上)』 - 広島県保護司会 竹原大崎地区

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連載「理不尽-ある解任騒動の真相」⑤『鵜と鵜匠(上)』

取り組み

2025.07.16

 当会の八崎則男会長は2020年(令和2年)6月、広島県保護司会連合会(県保連)の第9代会長に就任した。以来、県保連事務局が間借りしている広島保護観察所(広島市中区、広島法務総合庁舎内)に出向く機会が格段に増えたそうだ。

 自宅があるのは離島の大崎上島町。まず港からフェリーで瀬戸内海を渡って本土の竹原港へ。さらに高速バス「かぐや姫号」に乗り換えて広島市へ。そんな時間と労力を費やして庁舎の玄関口にたどり着くのだが、そこでは毎回、決まった「儀式」が待ち受けている。

 IDパスを手に颯爽と入り口ゲートを行き来する職員を横目に見ながら、入り口脇に陣取る警備員と向き合う。鞄を開いて中身のチェックを受け、スマホや小銭をポケットから出し、どの空港にも必ずある金属探知機をくぐる。さらに名前と電話番号、訪問先を用紙に記入し、そうしてやっと外来者は庁舎内に入ることができるのだ。

 いくら警備員と軽口をたたき合う顔なじみになっても、この厳かな儀式は免除してもらえない。そのセキュリティー上の必要性は分かっていても、紐の付いた入構証を首にかける時、八崎氏はしばしば、こんな自虐的な思いにかられたという。

「自分はまるで鵜飼いの鵜だな・・」

 それは保護司と主任官(その地区会を担当する保護観察官)との関係を思い起こすためかもしれない。両者はペアを組んで保護観察対象者と向き合う業務上のパートナー。ただ実際は、保護司は主任官の差配で受け持つ対象者が決まり、対象者との面談結果をその都度、主任官に報告する。見かけ上は「主従」関係と言えよう。

 八崎氏は会長として「県保連の足腰を強くしておく」必要性を感じた。その具体策として、①もし保護観察所から「県保連事務局の庁舎外への退去」を求められても慌てないよう準備しておく②実質的に観察所の広報紙となっている県保連の月刊機関紙『更生保護ひろしま』を本来の内容に戻す③県保連ホームページも全面的に作り直して発信力を高める-などの取り組みを決意した。

 ここでまず、八崎氏に対する解任動議がその根拠の一つにしている機関紙の編集方針「転換」について、偽りのない経過を紹介しておこう。

 創刊70年の歴史を誇る『更生保護ひろしま』は近年、県保連の機関紙とはいえ、記事の大半を保護観察所の職員が取材・執筆していた。県保連内部に編集委員会があり、定期的に会合を開いていたが、観察所側が用意する資料(毎号の掲載予定記事の一覧など)を追認するためのようなもの。しかも、毎号の内容は「ほぼ前年踏襲」と言っていい状況だったという。観察所の事業計画や人事をはじめ、保護司向けの連絡事項などに多くのページが割かれていた。

 ある時、八崎会長が編集委員会に出席し「これこれの行事を取材してもらえないか」と打診したところ、保護司である編集委員から「取材なんてできない」との返事が返ってきたそうだ。業を煮やした会長は編集委員の任期満了を待ってメンバーを総替えし、新しい編集委員長に会社役員で保護司の吉川水貴氏を据えた。2021年春のことだった。

 吉川委員長時代の『更生保護ひろしま』バックナンバーは、このホームページの「会報誌PDF」に載せてある。写真撮影も含め編集委員が手分けして取材・記事化したほか、寄稿ものは直接依頼し、レイアウトや見出しも含めて手作りにこだわり、そうして大汗をかきながら作っていたことは、読めばすぐ分かっていただけよう。

 「八崎氏の写真ばかり目立つ」との感想があるようだ。しかしそれは機関紙として県保連の行事を丹念に取材・掲載したことによる当然の帰結であろう。「更生保護行政全般をめぐる動向をもっと知りたい」という意見もあるようだ。だがそれは本来、観察所自らが広報すべきものであろう。

 八崎氏は本来の機関紙の姿に戻しただけであって、非難される筋合いはない。しかも編集委員会には以前と同様、観察所の職員が加わり、編集会議に出席していた。掲載内容について観察所からの意見があれば、吉川氏はその都度、真摯に聞いていたという。解任動議に「観察所の意見を無視した」とあるのはまさに事実無根の言いがかりに等しい。

 とはいえ、おとなしく飼われていたはずの鵜が、自分で自分の首のひもを外そうとしているー。鵜匠からすれば、そう見えたのかもしれない。はてさて、鵜と鵜匠との関係やいかに・・・<つづく>

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◎解任動議(抜粋)

議題1.八崎則男広島県保護司会連合会会長の解任の件

提案理由

(5)「更生保護ひろしま」の編集方針の転換は多くの会員の意見を無視して独断で行われた。

又、編集委員に観察官を入れず、保護観察所の意見を無視した。

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