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連載「理不尽―ある解任騒動の真相」⑦社会的信望
取り組み
2025.10.04
保護司は、希望すれば誰もがなれるわけではなく、必要条件がある。例えば保護司法第3条第1項は、以下の4項目をすべて具備する者のうちから法務大臣が委嘱する、と定めている。
・人格及び行動について、社会的信望を有すること
・職務の遂行に必要な熱意及び時間的余裕を有すること
・生活が安定していること
・健康で活動力を有すること
さらに全国保護司連盟が定めた「保護司信条」にはこんなくだりもある。
「(私たち保護司は)常に研鑽に励み、人格識見の向上に努めます」
地域の保護司の集まりでこの信条を唱和するのだが、筆者はその都度、照れくさい気持ちになって下を向いてしまう。
さて、2023(令和5年)3月の広島県保護司会連合会(県保連)理事会は、当時の八崎則男会長や吉川水貴選任理事(広島千茶荘専務)らの解任動議を決議した。このうち今回は「予算超過」と、ホームページ(HP)作成の見積書の「日付」について考えたい。この稿の末尾に、動議の関連部分を抜粋したのでご覧いただきたい。
まずは議題1の(1)だ。
八崎会長のもと2022年11月に刊行した『更生保護ひろしま70周年記念特別号』について、解任動議は、予算を超えた作成費の支払いを理事会が承認していない、として「不正」と断じた。
年間予算を超える支出は確かにあった。だが県保連の会則(当時)には「予算は理事会の議決によって定める」とあるものの、予算を超えそうなら事前に理事会の承認を得るとか、補正予算を組むとかの決まりは一切ない。
県保連の事務・会計処理規程も同様で、予算超過の際のルールは何も明文化されていない。ただ第11条に「予算の執行に当たり、同一の項の目相互間において資金を流用することができる」とある。
解任動議に対する質疑の中で、八崎氏はこう説明している。「(70年史の作成予算65万円とは別に)中保連(=中国地方保護司連盟)に頭を下げるなどして(広島県共同募金会からの助成金と合わせて)50万円いただいた。さらに(70年史の)売り上げを含めれば、65万円の予算には手を付けなくて済むんですよ」
実は八崎氏には「この70年史で浮いた予算を、HP事業の予算超過分に回せばよい」との思い込みもあったそうだ。ただ実際は、二つの事業の予算上の項目が異なり、流用はできないのだが・・。
加えて理事会の開催当時は70年史が売れ続け、県保連事務局に売り上げ代金が断続的に入金されていた頃だった。それでも補正予算を組んで理事会の承認を求めろ、というのならまだ話は分かるが、いきなり「不正」と断じるのはいかがなものか。
「社会的信望」とは、よくよく根拠を調べもせずに他人を断罪することなのだろうか。
また動議の議題1の(2)にあるHP改善(=全面リニューアル)見積書の「日付」について、吉川氏は当日の理事会で「HP予算が計上される以前に(広島千茶荘の)見積書を事務局に提出した」と反論した。しかし、この日は結局、これ以上のやり取りはなく採決されたため、吉川氏は後日、その経緯を県保連あての文書で丁寧に説明している。
すなわち広島千茶荘は「2022(令和4)年2月1日付」の見積書を県保連に提出していた。だが、後になって事務局長が「紛失したらしく、見つからない」と言い出したため、千茶荘側が「2023(令和5年)1月10日付」で再発行したというわけだ。
見積書の作成で使うエクセルには、日付欄に「TODAY関数」を埋め込むと、その欄はファイルを開いた日付に自動更新されるといった便利な機能がある。日付の正確性を高めるためだが、こうした機能が裏目に出た格好である。
そしてHPの全面リニューアルは2022年11月には出来上がり、月間の機関紙『更生保護ひろしま』などを通じて県内の全保護司に伝えていた。
もし動議にある日付が間違いないとすれば、事業の終了後にその事業の見積書が出たことになってしまう。動議の文面を書いた人はもちろん、理事会当日に解任賛成の挙手をした多くの理事たちは、そんな「日付の不自然さ」に、誰も疑問を感じなかったのか。
「人格」はさておき、これが「識見」なのだろうか。
<つづく>
――
◎解任動議(抜粋)
議題1.八崎則男広島県保護司会連合会会長の解任の件
提案理由
(1)「更生保護ひろしま」70周年史作成費の不正支払
理事会に提案された令和4年度予算書によると作成予算は65万円であり、これが理事会で承認された。
ところが令和5年3月6日現在の支払は、140万6785円が支払われている。予算より75万6785円も超過払であり、この超過支払は、理事会の承認がされていない。理事会が承認しない支出は不正支払いである。
(2)「ホームページ改善案」の業務執行の違法性
令和4年度予算にホームページ改善案には230万円が計上され、理事会の承認を得た。
1)予算の計上は、見積書に基づきなされるべきところ、令和4年3月の理事会に提出された「ホーム ページ改善案」については、見積書がとられないままに予算案が作成された。
見積書がとられたのは年度が変わった2022年(令和4年)8月10日●●●●、同年8月12日●●●●、2023年(令和5年)1月10日広島千茶荘であり、いずれも予算が成立した後のものである。
広島千茶荘にいたっては、今年の1月10日に見積書を提出しており、結果として同社が受注した。
2)令和5年3月6日付の事務局作成書類によると既に234万9716円が支払われており、あと87万2850円が千茶荘に支払予定である。この件についても予算を超過する。