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保護司のためのブックガイド(1)
お知らせ
2023.01.10
『仮釈放』吉村昭著 新潮文庫
ネタバレを避けるため、文庫本の裏表紙にあるPR文をそのまま引用する。
「浮気をした妻を刺殺し、相手の男を刺傷し、その母親を焼殺した高校教師の菊谷史郎。この重い罪によって無期刑の判決を受けた菊谷は、16年後に刑法にしたがい仮釈放された。長い歳月の空白をへた男の目にこの社会はどう映るか? 己れの行為を必然のものと確信して悔いることのない男は、与えられた自由を享受することができるか? 『罪と罰』のテーマに挑み、人間の悲劇の原型に迫る長編小説」
2人の保護司が登場する。主人公=保護観察対象者の更生に向け、保護司はどう接し、何を語りかけるのか。綿密な調査取材で知られる著者だけに、面談する場面など保護司の言動には、まるでドキュメンタリーのようなリアリティーがある。
その意味で、保護司になりたての人、あるいは保護司になろうと思う人にうってつけだろう。もちろんベテラン保護司にとっても、更生とは何か、贖罪とは何かについて、深く考えさせてくれるのは間違いなさそう。ともあれ、ラストの衝撃がすさまじい。
単行本は新潮社から1988(昭和63)年に刊行され、その後に文庫化された。2006(平成18)年に79歳で亡くなった著者にとっては、脂が乗りきった時期の作品といえよう。今なお増刷を重ねるロングセラーで、手元にある文庫本の奥付には「令和3年12月10日・28刷」とある。
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このコーナーで順次、「お薦め本」を紹介していきます。取り上げてほしい書籍がございましたら、このホームページの「お問い合わせ」フォームを使って情報提供してください。
また、昨年秋に広島県保護司会連合会から発行された『更生保護ひろしま創刊70周年記念特別号』では、以下の3冊が紹介されています。
①『前科者(コミック)』原作・香川まさひと、作画・月島冬二
②『プリズン・サークル』坂上香著
③『庭仕事の真髄』スー・スチュアート・スミス著