連載「理不尽―ある解任騒動の真相」②『だまし討ち』 - 広島県保護司会 竹原大崎地区

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連載「理不尽―ある解任騒動の真相」②『だまし討ち』

取り組み

2025.04.16

 2023年(令和5年)3月16日、うららかな春の昼下がりだった。広島市中区、広島法務総合庁舎の最上12階にある会議室。窓から西を望むと、サッカースタジアム(後に「エディオンピースウィング広島」と命名された)の建設工事現場で、クレーンが空へと伸びていた。

 午後3時すぎ、広島県保護司会連合会(県保連)の令和4年度第3回定例理事会が始まった。だが冒頭から、荒れに荒れる。当時の八崎則男会長の挨拶に続き、輪番制で選ばれた理事の一人が議長席へ。議事に入ると告げた途端、「動議」と声が上がったのである。

 副会長の1人が提出した動議は2件あった。うち1件は新年度予算案など執行部がこの日に提出した議案すべてを廃案とし常任理事会に差し戻すこと。もう1件は八崎会長をはじめ、機関紙「更生保護ひろしま」の吉川水貴編集委員長(選任理事)、さらに事務局長(選任理事)1人と監事2人の計5人の「解任」であった。

 唐突な展開に戸惑いながらも八崎、吉川両氏は「動議は多くの事実誤認に基づいており、到底納得できない」などと反論を試みた。だが、事前の根回しを覆すには至らず、不可解な議事運営も相まって、動議は2件とも通ってしまう。

 小説やテレビドラマでは往々にして、解任する側が「正義」、される側が「不正義」と相場は決まっているが、現実世界はそんなに単純ではない。ましてや今回は八崎氏が指摘したように、解任根拠は事実誤認に満ち、説得力に欠けていた。

 一通りの採決が終わった最後に、ある選任理事がフロアからこう発言した。「私はすべて棄権した。なぜ執行部で話をしないのか? これ、理事会に諮るべきことですか?」。この疑問こそが、だまし討ちとも言いたくなる今回の動議に対する率直で冷静な感想だろう。

 しかし、こうした発言は、来賓としてオブザーバー参加していた広島保護観察所の当時の所長こそが口にすべきではなかったか。興奮状態にある県保連の面々をクールダウンさせる仲裁役を果たしていいはずなのだが、なぜか所長は終始、無言を貫いた。

 さらにもう一つ、当日の議長の議事運営の不可解さをここで指摘しておきたい。

 議長はまず、動議を取り上げるかどうかの採決をした。そこで賛成多数だったことを理由に、どういう訳か動議1の討論・採決を完全にすっ飛ばし、いきなり動議2を上程したのである。

 さらに、この動議2のうち事務局長解任の採決は「賛成11、反対5、棄権12」となり、県保連の会則が定める「出席理事の過半数」との議決基準を満たしていないのに、議長は「可決したということにさせていただきます」との言い回しでごまかしたのだから、ますます訳が分からなくなってくる。

 結果、宙ぶらりんとなった事務局長は後日、自ら辞表を提出したという。<つづく>

(写真を加工しています)

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